205号室  黒田眞澄 今日はどうやら日が悪いらしい 買い物に出かければ溝に落ちる、自転車に轢かれる、目当てのものは売り切れ、財布は落とす 散々だ まったくいいことが無い 最悪だ 時刻は午後2時 春のやさしい陽がキラキラとまぶしい のはいいのだが、帰りの電車賃も無い俺の上だけ暗雲がモクモクしてる気がする 恨めしい 結局昼飯も食えてない 何なんだ今日は いったいボクが何か悪いことしましたか神様! はぁ、やれやれ 歩いて帰れる距離じゃないなコレは・・・ ゴソゴソとジャケットからケータイを取り出す メモリを開いてコール プップップ―プルルルル 1回 プルルルル 2回 プル 「ウイーッス!まーくんじゃーん!」 聞きなれた底抜けに明るい声 やたら後がうるさいな 「やぁ、ケイゴ」 「どったのどったのーこんな昼間っからー?あ!わかった!今日買いに行くって言ってたLPゲットしてうきうき自慢電話?俺にも貸してよー?」 いつも思うがコイツ息継ぎしてないのか? 「いや、買いには出かけたんだが・・・財布落としてね、帰るに帰れないんだ」 「うは、まじでー?どっじー!まーくんらしくねーなー」 「で、今ヒマか?」 「うーん、今ねー・・・ぬぅあ!またずれた!」 ・・・パチンコかよ 「丁度ヤメどきだしいいぜー迎えにいってもー」 「わりいな、場所は―」 持つべきものはよき隣人だ 2,30分はかかるだろう 「マッハでいくぜー!」とか言ってたが ぜひ安全運転をしてもらいたいものだ 「いやーごめんごめん!遅くなったーまったく今日はついてないぜー10万負けちまったい」 何処がヤメどきだったんだろうか 「10万負けたって・・・今月後どうするんだよ」 「まーくんに養ってもらう」 「馬鹿言え」 「晩飯食わせてー」 「カップ麺しかないぞ?」 そんなことをいいながらもケイゴのベスパは軽快に走る もうずいぶんと年代モノなのによほど大事にしてるんだろう 顔に当たる風が気持ちいい が、バイクに乗る用意なんかしてないからやたら寒いんだこれが ふと風が緩んできた あれ?信号は青だぞ 「おい、ケイゴ?」 「あー!!まーくん・・・ごめん、ガス切れた」 所持金二人合わせて63円 それから2時間交代でベスパひきながら歩いて帰った 一人で歩いて帰ったほうがよかったかも知れない 今日はどうやら日が悪いらしい ホントにもう・・・