304号室 藤田 貴正 カリカリカリ…… カタカタカタ…… 「……うは、おっもしれーなぁ、これ」 暗い部屋の中で、俺は一人ディスプレイの前で笑った。 俺は夜な夜な、面白い事を探してネットサーフィンをしている。 休みの今日は朝からずっとだ。 まったく飽きる事が無い、そういえば朝から何も食べてなかった。 ピリリリリ!……ピリリリリ!…… 机の横に置いてある携帯が鳴った。 俺は発信者を確認すると携帯の電源ごときった。 実家からかかってきた電話だった。 きっとまた親父かお袋からに決まっている。 「イチイチうるせーんだよ、クソッ!」 俺は手に持った携帯を床に叩きつける。 携帯のパーツ類が飛び散り、盛大にブチ壊れた。 どうせ予備校にちゃんと行けとか、言うに決まってんだ。 なんでそんなところに無理矢理行かされなきゃならねーんだ。 何が良い大学に入って、良い会社に就職しろだ。 ハッ、くだらねー。 俺は親のおもちゃじゃないっつぅの。 自分の生き方ぐらい自分で決めてやる。 俺はまた、クソッ!と何かに対して罵った。 やがて、部屋に再び静寂が戻ると、俺はまたネットサーフィンを始めた。 そしてその日の深夜、玄関のチャイムが鳴った。 それもしつこく何度も鳴らしてくる。 「クソッ!なんだよこんな時間に!」 俺はどかどかと足音を鳴らし、玄関を少し乱暴に開けた。 「どな……姉貴」 ドアを開けたところには久しぶりに会う姉貴が立っていた。 姉貴と会うのは何ヶ月ぶりだろうか。 姉貴は両親の期待を裏切ることのない人生を送り、今は大学生だ。 が、今日は何か様子がおかしい。 なんだか立っている姿が朧気というか、元気が無いというか…… それによく見ると、目が赤く腫れていた。 (泣いて、たのか……?) 「どうしたんだよ、こんな時間に?」 「…………」 姉貴は何も応えない。 「姉貴?」 すると小さな嗚咽が聞こえた。 姉貴が泣いていた。 「あね、き……?」 「タカぁ……父さんと母さん……死んじゃったよぉ」 「え……?」 姉貴の口から出てきた言葉は、おそよ予想外の言葉だった。 (死んだ?親父とお袋が……?) わけがわからなかった、ついこの間まで口うるさく電話をしてきていたのに。 (どうして……) 俺は親父とお袋の顔を思い浮かべた。 が、何故か二人の顔は、霧につつまれたような感じで思い出せない。 次第に全身が、がくがくと震えはじめた。 やがては立っていられなくなり、俺はその場に尻込みした。 (死んだ?……親父とお袋が?) 頬を、冷たい何かがつたい落ちた。