309号室  来井崎由姫 窓際にはサボテン 机の上には読みかけの小説 テレビはどうでもいいバラエティ ケータイにはいつものくだらないメール 何時からだろう、毎日がこんなにつまんなくなっちゃったのは タバコに火をつける ふぅっと吐き出した煙は、一直線に天井に伸びて部屋中に広がっていった この部屋に最後にアイツが来たときに忘れていったタバコ 「オマエ強いからさ、一人でも大丈夫だろ」 この部屋に最後にアイツが置いていったコトバ とてもとても悲しくて切なくて ココロにぽっかりと穴が開いたみたいで タバコを吸い始めたのはそんなスキマを埋めようとしたのかも アイツの匂いに包まれたかったのかも なくなると、買って来て なくなると、買って来て もう何箱買ったんだろう いつかアイツが取りにくるんじゃないかと そんなことはないってわかっているのに ワタシはこんなに弱かったんだ 「―ワタシはね・・・アンタが思ってるほど強くないのよ」 ぽたり、と涙が落ちた ふんだ、煙が目にしみただけなんだから もっと良いオトコ見つけてやるんだから ちょっと乱暴にタバコをもみ消した